「禁煙」か「喫煙可」か 悩む飲食店 都条例、表示義務化始まる
- 政治・経済
- 2019年9月16日
東京都内の飲食店では今月から、禁煙や喫煙、分煙の表示が義務化された。来年の東京五輪・パラリンピックの開催を控え、都の受動喫煙防止条例を一部施行したことによるもの。喫煙ルールが強化される来春の改正健康増進法や都条例の全面施行に向け、都内の喫煙可能な店は分煙施設の設置など準備が求められる。だが、現時点では多くの店が客足への影響を懸念し、対応を決めかねている。(植木裕香子)
■専用室が必要も
条例が一部施行された前日の8月31日。中央区日本橋室町の洋食店「レストラン桂」の店主、手塚清照(きよあき)さん(42)は、「NO SMOKING」「11時~14時」と記載されたステッカーを入り口脇に張った。
店では、「昔と比べるとだいぶ減ったが、お酒を飲みながらたばこを吸う人が今も3分の1くらいいる」として、ディナータイムは喫煙可だが、約10年前からランチタイムは禁煙にしており、表示義務化による影響はない。
だが、来年4月に国の改正健康増進法に加え、都の条例が全面施行されると、ディナータイムの対応を迫られることになる。
全面施行後は、同店のように従業員を雇う飲食店は、店舗面積にかかわらず屋内は原則禁煙。喫煙は煙が漏れない専用室がある場合しかできないと定められているからだ。
「喫煙室を別に設ける気はない。来春には全面禁煙にする予定です」と手塚さん。今回の表示義務を契機に、利用客に来春の全面禁煙実施について順次説明する。「付近でも全面禁煙の店は増えている。子供連れの人も訪れやすくなればいい」と話す。
■客が減る…
都によると、従業員を雇用して規制対象となるのは都内の飲食店全約16万店のうち、約84%に当たる約13万店。都の担当者は「店側には条例が一部施行された今から、全面施行に向けた対応を促したいという思いもある」と打ち明ける。
だが、店頭での表示義務化から約1週間。来年の条例全面施行に向けた対応を決めかねている店は少なくない。
都内で洋食店を経営する40代男性は、「お酒を飲んだ後にたばこを吸う客も多い。全面禁煙にすれば喫煙客は減ってしまう」と頭を抱える。都内で中華料理店を営む別の30代男性も「喫煙室を設置するには費用もかかるし、工事期間中は普段通りの営業ができず、店の利益に影響しかねない。全面禁煙にするかも含めて、慎重に判断しないといけない」と強調した。
■少ない補助申請
都では、喫煙室の設置費用などとして最大400万円を補助する制度を始めている。だが9月以降の問い合わせは1日20件以上あるが、申請件数は少ない。
分煙事業に携わる「トルネックス」(中央区)の広報担当者によると、関心の高さから9月時点の問い合わせは平成29年8月時点と比べて約2倍に増えているものの、「具体的な設置に向けた発注は低調な傾向」という。
一連の状況について小池百合子知事は、8月末の会見で「条例を実効性のあるものにするためには、都民や事業者、区市町村の理解、協力が重要。引き続き説明会などを通して制度の内容、支援策などを説明する」と話した。
■改正健康増進法と都の受動喫煙防止条例 客席面積100平方メートル以下などの小規模飲食店を喫煙可能とする改正健康増進法に対し、都の受動喫煙防止条例は親族以外の従業員がいれば屋内禁煙とし、「喫煙専用室」でのみ喫煙を容認。敷地内禁煙とする施設のうち、幼稚園や保育所、小中高校については、同法が屋外での喫煙場所設置を可能とするのに対し、都条例は成長過程の子供を守るため、屋外の喫煙場所設置も認めない。
一言コメント
最近では喫煙者を採用しない会社もあるらしい…
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